道場訪問記

その17 豊水会(駿河区豊田)

その名の通り、豊田中学校で毎週水曜日に活動する「豊水会」。元々は「剣工会」の名称で多くの小中学生も参加する稽古会としてお馴染みでしたが、この4月から一般向け稽古会としてリニューアルスタートしました。稽古時間のほとんどを基本に充てる稽古スタイルは独特で魅力的。徐々に会員数を増やしている注目の稽古会です。

「豊水会(とよすいかい)」は、静岡市立豊田中学校の剣道場において毎週水曜日の19時から20時30分まで行われている稽古会です。創立は平成30年4月ということですので、つい最近新設された剣友会かと思いきや、実は昨年度まで「剣工会」の名称で活動してきた稽古会です。

これまで使用してきた「剣工会」の名称は、静岡工業高校剣道部のOB会組織です。現静岡市剣道連盟顧問の望月茂彦教士七段が十数年来代表として「剣工会」の稽古会を主宰してきましたが、この3月いっぱいで勇退されたことを機に海野千秋剣道教士七段に代表者を交代し、名称を「豊水会」としました。

なお、「剣工会」自体は静岡工業高校剣道部OB会組織として稽古会とは別に存続しています。

19時頃一般会員の皆さんが集まってきます。会員といっても別団体所属の方もいらっしゃって、団体の垣根を越えて剣道好きが集まっている稽古会といった印象でした。この日は9人の愛好家の皆さんが参加しました。

各自で準備体操・素振りをして19時30分頃から面をつけての稽古が始まります。まずは回り稽古で「基本」なのですが、実はこの基本稽古こそが「豊水会」の稽古の最大の特徴と言ってもいいかもしれません。

この日行われた基本稽古の内容は次のようなものでした。

①声を出さずに摺り足でゆっくり左右面を打つ切り返し、②元立ちが面を打つのに返し胴で切り返し、③大きく通常の切り返し、④継ぎ足なしで大きく面打ち、⑤攻め合いの中で継ぎ足なしでの面打ち、⑥面・小手・胴・突き、⑦面返し胴、などなど。

ペースはゆっくりですが、ところどころ海野先生が注意点を指摘しながら丁寧に進められていきます。

この後、9人全員が一列に並んで前後から交互に仕掛ける技に対しての応じ技を数パターンなど、中学・高校の実力派チームがやるような実践的稽古にも取り組んでおられました。

ここまで基本稽古にかけた時間はなんと45分。とかくいきなり地稽古から始めてしまいがちな一般有段者の稽古ですが、「真っ直ぐ、正しく」の稽古方針に示されているように、小手先の技ではなく、基本的な技を時間をかけて丁寧に稽古しているのがこの「豊水会」です。

最後に1分間の地稽古を10本ほど。回り稽古で行いますのでほぼ総当たりになります。ここでは攻め合いをせずにスピードに頼って軽々に飛ぶのではなく、お互いに気を錬り合ったうえで初太刀一本を取りに行く、そういった大人の重厚な稽古を心掛けているようでした。これも海野先生の指導方針です。

20時30分稽古が終了。整列・礼をして解散となりました。

「豊水会」の稽古は、剣道愛好家なら所属団体を問わずどなたでも参加大歓迎とのこと。4月からのリニューアルスタートで参加者が減らないか心配もあったそうですが、海野先生の温厚な人柄に惹かれてかここ数週間で新規に参加される方も増えてきました。稽古後の和気あいあいとした雰囲気も魅力のひとつです。

初心に立ち返って基本稽古にみっちり取り組むことができる「豊水会」。今後も会員が増えてきそうな予感です。

教室データ

稽古場所 静岡市立豊田中学校剣道場
稽古日 水曜日 19時00分~20時30分
入会金 無料
会費 1,000円/6ヶ月
問合せ先 090-9121-5269(海野千秋)
静岡市剣道連盟
▲ページの上へ